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対人マッチだけ入れないとき
ロビーには入れる。訓練場のBOT戦もできる。なのに対人が絡むものだけ、ロード中に切られてロビーへ戻される。これはPCの性能でもゲームの不具合でもなく、回線の作りが原因のことがあります。
うちの回線がまさにこれでした。原因の切り分けから、実際に入れるようになるまでをそのまま書きます。マンションやアパートに最初から付いている回線を使っている人は、同じところで詰まっている可能性があります。
Cloudflare WARP をつなぐと、対人マッチに入れるようになりました。
ただし自己責任です。使うかどうかを決める前に、下の「なぜ自己責任なのか」を読んでください。
原因は、通信を振り分ける「受付」が自分の家ではなく回線の事業者側にあることです。しかもその受付は、近所の何十軒かと共用しています。だから家の中の設定をどれだけ変えても、そこには届きません。
こういう症状です
ロビー、ロードアウト、訓練場のBOTデスマッチ。ここまでは普通に動く。
カジュアルもランクも、対人が絡むものは全部。ロード画面の途中で切られ、ロビーへ戻される。
出る警告 「マッチから退出しました。放棄するとペナルティが適用されます。このマッチに再入場しますか?」
自分で確かめる(3分)
上から順にやると、回線が原因かどうかが先に分かります。原因が違うところにあるのに設定をいじり回すのが、いちばん時間を溶かします。
いちばん早い決め手。USBテザリングでスマホの回線につなぎ、対人マッチに入れるか試す。これで入れたなら、PCもゲームも悪くない。自宅の回線が原因だと確定します。
コマンドプロンプトで tracert 8.8.8.8 と打つ。2ホップ目が 10. や 172. や 192.168. で始まっていたら、自分のルーターの外側にもうひとつ、建物側のNATがあるということです。
確認くんなどで出た自分のIPを逆引きします。名前の末尾が transix.jp になっていたら IPv4 over IPv6(DS-Lite)です。うちの場合は末尾が .static.user.transix.jp で、組織は AS55392 INTERNET MULTIFEED CO. でした。⚠️ 自分のグローバルIPは人に見せる必要はありません。ここでも伏せています。
ルーターの管理画面を開き、Internet(WAN)側のIPアドレスを見ます。バッファローなら「ステータス」の「システム」に出ています。そこの数字と、確認くんなどで出る自分のIPが違っていたら、自分のルーターの外にもうひとつNATがあるということです。うちはWAN側が 10.92.214.x のプライベートアドレスで、サブネットマスクは 255.255.255.128 でした。同じ区画を最大125台で分け合う作りです。外から見えるIPのほうは、登録組織が INTERNET MULTIFEED CO. でした。この2つが別物である時点で、ポート開放が家の外まで届かないことは確定します。
通信が通っている道
宅内の住所(192.168.x.x)
ここまでは自分で設定できる
アパート・マンションに最初から入っている
1つの住所を何十軒かで共有している
ここまで来てやっと外の世界
手元で設定を変えられるのはここまで
荷物の行き先を振り分けているのはここ。家の外にある
DS-Lite は、1つのグローバルIPv4アドレスを複数の利用者で分け合う仕組みです。アドレスを分け合うということは、通信の入口を割り振る装置(NAPT)が自分の家ではなく事業者側にあるということでもあります。
受付の癖を測る
家の外にある「受付」がどんな癖を持っているかは、外の測定サーバーに聞けば分かります。うちで測ったら、2つの性質がきれいに分かれました。
ゆるい
相手が誰であっても、外から見えるこちらの番号は同じでした。こちらから話しかけるぶんには困りません。
いちばん厳しい
こちらが送った相手の「住所」と「窓口の番号」が両方とも一致するものしか受け取りません。同じ相手でも窓口が違えば弾かれます。
対戦の通信は、最初に話しかけた窓口とは別の窓口から返ってくることがあります。そのときの1通目が、この受け入れ方だと弾かれます。返事が来ないので、ゲームは通信の口を開いた直後に閉じます。実際、うちで測ると口は1秒で閉じていました。ここが対戦だけ成立しない理由だと考えていますが、SAZがどの窓口から返してくるかは公開されていないため、断定はできません(推測)。
WARPをつなぐと直るのも、同じ理屈で説明がつきます(推測)。WARPは外へ向けて1本の通り道を作り、通信を全部その中に通します。受付から見ると、こちらはいつも同じ1つの相手とだけ話していることになるので、厳しい受け入れ方に引っかかりません。
規格はどう言っているか
この厳しさは、大勢で分け合っているせいで避けられないもの、ではありません。通信の規格はむしろ逆のことを書いています。
REQ-7 で「endpoint-independent filtering を使うことを推奨する」としています。その理由として、ゲームとP2Pがこのゆるい受け入れ方に頼っている、と名指しで挙げられています。
REQ-8 が推奨として挙げているのは「endpoint-independent」と「address-dependent」の2つだけです。うちで測れた「住所と窓口の番号が両方そろわないと通さない」は、そのどちらでもありません。
RFC 4787 の REQ-1 は「endpoint-independent mapping でなければならない」としています。うちの受付はこちらは満たしています。厳しいのは受け入れ方の側だけです。
これは違反ではありません。どちらも「推奨」であって義務ではなく、厳しい側を選ぶこと自体は事業者の判断です。ここから言えるのは「いまの厳しさは、共有していることの必然ではない」という一点だけです。
測り方は STUN(RFC 5780)の change-request です。別アドレスを持つ測定サーバー4つ(voipbuster / ekiga / voipstunt / counterpath)で同じ結果でした。2026-08-29、WARPを切った状態で測っています。
やっても効かなかったこと
割り振りをしている装置が自宅の外にあるので、届きません。
同じ理由で効きません。
よく出てくる改善策ですが、DS-Lite はそもそもIPoEなので、すでに当たっています。
建物の設備として入っている回線だと、そもそも選べないことがあります。
入れるようになった方法
入れるようになった方法は2つ。どちらも実機で確かめています。ふだん使っているのはWARPのほうです。
Cloudflare の公式サイトから入れて、モードを「トラフィックとDNS (UDP)」にしてから「接続」ボタンを押します。これだけで対人マッチに入れるようになりました。外から見えるアドレスは Cloudflare のもの(日本国内)に変わります。SAZを起動する前に接続しておきます。
Windows・Mac・スマホの入口が並んでいます。PCで使うなら Windows 版を選びます。
モバイル回線を通すので同じく入れます。ただしデータ量を食うので、原因の切り分け用と考えたほうがいいです。
つないだときと、つないでいないとき
2026年8月29日の19分間に、同じチームデスマッチで両方を試しました。変えたのはWARPをつなぐかどうかだけです。
入れない。「マッチから退出しました」と出て、こちらが抜けていないのに退出の扱いになった
300を超えていた
退出の扱いになった回数が積み上がり、次のマッチに入れない待ち時間が付く。この待ち時間は、重ねるほど長くなる。この日は今日2回目・シーズン累計10回目で、画面を見たときの残りは4分45秒だった
入れて、最後までプレイできた
20〜29ms
次のマッチにもそのまま入れた
対戦用の通信口がどれだけ開いていたか(1秒と6分11秒)は、ページの先頭の図にまとめてあります。
入れなかったときも、こちらから接続先へ打った往復は1032回すべて返ってきました。取りこぼしは0回、17msを超えたのは1032回のうち5回だけです。つまり入れなかったあいだも、回線そのものは動いていました。変わったのは、対戦のための通信が成立するかどうかだけです。ゲーム内のpingが300から20台に落ちたのも同じ理由で、つないでいないときはそもそも通信が成立していません。
遅くならないのか(実測)
ゲーム内のping21〜28ms同じ部屋の他の人は 2〜100ms
957回のpingで損失0。家の中は原因ではない。
ここまでがWARPを通す分の増加。
サーバーの所在地までは特定できていません。
なぜ自己責任なのか
うちでは問題は出ていません。それでも人に勧めきれない理由が5つあります。順に、重いものから並べます。
NEXONの利用規約の第5条(行動規範)に、禁止されるものとして「何らかの方法で、Nexon又はその指定する者により使用されている通信プロトコルを妨害、傍受、模倣又はリダイレクトすること(プロトコル模倣、トンネリング、パケットスニッフィング、ソフトウェアの変更又はコンポーネントの追加…を含みますがこれに限定されません)」とあります。「VPN」という語はどこにも出てきません。しかしVPNの中身はトンネリングであり、通信の出口を変えるものです。これに当たるかどうかは、読む人ではなく運営が決めることです。ここでは当たるとも当たらないとも言えません。
同じ規約に「Nexonは、いつでも、理由の有無を問わず、本サービスへの利用者のアクセスを制限、停止、変更又は終了させることができる」とあります。事前の警告や理由の説明が約束されているわけではない、という意味です。
SAZにはカーネルレベル(OSの一番深いところ)で動く Nexon Game Security が入っています。VPNのクライアントも仮想のネットワーク機器をOSに足します。うちでは併用して不具合は出ていませんが、これは1台での結果でしかありません。
WARPを通すと、外から見えるアドレスは Cloudflare のものになります。そのアドレスは他の利用者とも共有されます。同じアドレスから別の誰かが問題を起こしたとき、アドレス単位の措置に巻き込まれる可能性は否定できません(実際に起きたわけではありません)。
回り道をするぶん、うちでは11ms増えました。またゲーム側の対策やWARP側の仕様変更で、ある日つながらなくなることも起こりえます。恒久的に使える方法だと思わないでください。
そのうえで、建物に備え付けの回線では、提供元が「オンラインゲームの利用はお客様の自己責任」「サポート対象外」と定めていることがあります。つまりどこにも保証はありません。使うかどうかはご自身で決めてください。
引用は 利用規約及びエンドユーザーライセンス契約(効力発生日 2026年7月16日)の第5条から。2026-08-29 に原文を開いて確かめました。規約を開く
アプリの画面で選ぶ「モード」は「トラフィックとDNS (UDP)」にします。ここだけ合っていれば、ほかの設定は初期のままで大丈夫です。
ネットで見かける判定に「100.64. で始まるIPが出たら共有型」というものがありますが、これだけで決めないでください。transix の DS-Lite はその番号を使わないので、共有型でも出てきません。うちでも1度も出ませんでした。
WAN側のIPは固定ではありません。うちのルーターは建物側からDHCPで受け取っていて、貸し出しの期限は1時間40分でした。時間が経てば別の番号に変わります。
ここに書いたのは transix の DS-Lite で確かめた話です。他のIPv4 over IPv6サービスでも、同じアドレス共有型なら似たことが起きると思われますが、そちらは確かめていません。
専門用語の噛み砕いた説明
上の説明に出てきた専門用語を、ここでまとめて噛み砕いておきます。全部を覚える必要はありません。読んでいて引っかかったものだけ見てください。