ZEROINSAZ攻略 by Gordy

Network

対人マッチだけ入れないとき

ロビーには入れる。訓練場のBOT戦もできる。なのに対人が絡むものだけ、ロード中に切られてロビーへ戻される。これはPCの性能でもゲームの不具合でもなく、回線の作りが原因のことがあります。

うちの回線がまさにこれでした。原因の切り分けから、実際に入れるようになるまでをそのまま書きます。マンションやアパートに最初から付いている回線を使っている人は、同じところで詰まっている可能性があります。

結論

Cloudflare WARP をつなぐと、対人マッチに入れるようになりました。

ただし自己責任です。使うかどうかを決める前に、下の「なぜ自己責任なのか」を読んでください。

原因は、通信を振り分ける「受付」が自分の家ではなく回線の事業者側にあることです。しかもその受付は、近所の何十軒かと共用しています。だから家の中の設定をどれだけ変えても、そこには届きません。

なぜ自己責任なのかを読む

なぜ入れないのかを消去法で示した図。回線そのもの・ロビーの接続・対戦の口を開く力の3つは実測で問題なし。入れなかったマッチのために開いた口だけが1秒で消えた。WARPをつなぐと同じマッチで6分11秒開いたままになった
怪しいところを1つずつ実測で潰した結果です。棒の長さは、それぞれが「開いていた時間」をそのまま縮めたもの。入れなかったマッチの口だけが、見えないほど短く消えています。図をタップすると原寸で開きます。
Symptom

こういう症状です

入れる

ロビー、ロードアウト、訓練場のBOTデスマッチ。ここまでは普通に動く。

×
入れない

カジュアルもランクも、対人が絡むものは全部。ロード画面の途中で切られ、ロビーへ戻される。

出る警告 「マッチから退出しました。放棄するとペナルティが適用されます。このマッチに再入場しますか?」

対人マッチに入れないときの画面の流れ。相手が見つかる→マッチ入場中→マップの読み込み→ロード中に切られる→マッチング制限
実際の流れです。マップの読み込みまでは進むのに、そこで切られてロビーへ戻されます。自分で抜けたわけではないのに「退出」の扱いになり、回数が積み上がって次に入れるまで待たされます。この待ち時間は、重ねるほど長くなります。(画面は 2026-08-29 の実機)
Check

自分で確かめる(3分)

上から順にやると、回線が原因かどうかが先に分かります。原因が違うところにあるのに設定をいじり回すのが、いちばん時間を溶かします。

① スマホのテザリングで試す

いちばん早い決め手。USBテザリングでスマホの回線につなぎ、対人マッチに入れるか試す。これで入れたなら、PCもゲームも悪くない。自宅の回線が原因だと確定します。

② 途中の道を見る

コマンドプロンプトで tracert 8.8.8.8 と打つ。2ホップ目が 10. や 172. や 192.168. で始まっていたら、自分のルーターの外側にもうひとつ、建物側のNATがあるということです。

③ 自分のグローバルIPの逆引き名を見る

確認くんなどで出た自分のIPを逆引きします。名前の末尾が transix.jp になっていたら IPv4 over IPv6(DS-Lite)です。うちの場合は末尾が .static.user.transix.jp で、組織は AS55392 INTERNET MULTIFEED CO. でした。⚠️ 自分のグローバルIPは人に見せる必要はありません。ここでも伏せています。

④ ルーターのWAN側IPと、外から見えるIPを見比べる

ルーターの管理画面を開き、Internet(WAN)側のIPアドレスを見ます。バッファローなら「ステータス」の「システム」に出ています。そこの数字と、確認くんなどで出る自分のIPが違っていたら、自分のルーターの外にもうひとつNATがあるということです。うちはWAN側が 10.92.214.x のプライベートアドレスで、サブネットマスクは 255.255.255.128 でした。同じ区画を最大125台で分け合う作りです。外から見えるIPのほうは、登録組織が INTERNET MULTIFEED CO. でした。この2つが別物である時点で、ポート開放が家の外まで届かないことは確定します。

Route

通信が通っている道

自分のPC

宅内の住所(192.168.x.x)

自分のルーター

ここまでは自分で設定できる

建物の設備

アパート・マンションに最初から入っている

事業者の受付(NAPT)

1つの住所を何十軒かで共有している

インターネット

ここまで来てやっと外の世界

手元で設定を変えられるのはここまで

荷物の行き先を振り分けているのはここ。家の外にある

DS-Lite は、1つのグローバルIPv4アドレスを複数の利用者で分け合う仕組みです。アドレスを分け合うということは、通信の入口を割り振る装置(NAPT)が自分の家ではなく事業者側にあるということでもあります。

公式がこう書いている
transix の公式ページに「本サービスは1つのグローバルIPv4アドレスをシェアするアドレス共有型のサービスです」、そして「NAPT位置:transixネットワーク内」とあります。手元の機器の話ではないと、事業者自身が明記しています。
だから手元では直せない
自分のルーターでポート開放してもUPnPを入れても効きません。割り振りをしている装置がその外側にあるので、手元の設定はそこまで届かないからです。
集合住宅だともう一段ある
うちの場合はさらに建物側のNATが挟まっていて、PC → 自前ルーター → 建物内のNAT → 事業者側のNAPT の三重でした。
提供元が「できない」と書いていることがある
建物に最初から入っている回線は、提供元がポート開放に対応していないことがあります。公式のよくある質問に「ポート開放は行っておりません」「オンラインゲームはサポート対象外です」とはっきり書いている事業者もあります。自分の回線がどうなっているかは、契約している提供元のよくある質問で「ポート開放」を探すと数分で分かります。
入れる家と入れない家の比べ図。入れる家は1軒に1つ受付があり、入れない家は何十軒かで受付を1つ共用している
違いはここだけです。受付が1軒に1つあるか、何十軒かで1つを分け合っているか。分け合っていると、外から来た通信を自分の家まで通せません。
Behaviour

受付の癖を測る

家の外にある「受付」がどんな癖を持っているかは、外の測定サーバーに聞けば分かります。うちで測ったら、2つの性質がきれいに分かれました。

外から来たものをどう受け入れるかの図。受付は近所の何軒かと1つの住所を分け合っている。送った相手から返ってくるときは通る。別の窓口から返ってくると受付で弾かれる。WARPで1本の道にすると通る。
外へ出るときの番号の付け方
結果

ゆるい

中身

相手が誰であっても、外から見えるこちらの番号は同じでした。こちらから話しかけるぶんには困りません。

×外から来たものの受け入れ方
結果

いちばん厳しい

中身

こちらが送った相手の「住所」と「窓口の番号」が両方とも一致するものしか受け取りません。同じ相手でも窓口が違えば弾かれます。

対戦の通信は、最初に話しかけた窓口とは別の窓口から返ってくることがあります。そのときの1通目が、この受け入れ方だと弾かれます。返事が来ないので、ゲームは通信の口を開いた直後に閉じます。実際、うちで測ると口は1秒で閉じていました。ここが対戦だけ成立しない理由だと考えていますが、SAZがどの窓口から返してくるかは公開されていないため、断定はできません(推測)。

WARPで直る理由

WARPをつなぐと直るのも、同じ理屈で説明がつきます(推測)。WARPは外へ向けて1本の通り道を作り、通信を全部その中に通します。受付から見ると、こちらはいつも同じ1つの相手とだけ話していることになるので、厳しい受け入れ方に引っかかりません。

規格はどう言っているか

この厳しさは、大勢で分け合っているせいで避けられないもの、ではありません。通信の規格はむしろ逆のことを書いています。

大勢で1つの住所を分け合う装置の規格(RFC 6888)

REQ-7 で「endpoint-independent filtering を使うことを推奨する」としています。その理由として、ゲームとP2Pがこのゆるい受け入れ方に頼っている、と名指しで挙げられています。

装置一般の規格(RFC 4787)

REQ-8 が推奨として挙げているのは「endpoint-independent」と「address-dependent」の2つだけです。うちで測れた「住所と窓口の番号が両方そろわないと通さない」は、そのどちらでもありません。

番号の付け方のほうは規格どおり

RFC 4787 の REQ-1 は「endpoint-independent mapping でなければならない」としています。うちの受付はこちらは満たしています。厳しいのは受け入れ方の側だけです。

言い過ぎないための注

これは違反ではありません。どちらも「推奨」であって義務ではなく、厳しい側を選ぶこと自体は事業者の判断です。ここから言えるのは「いまの厳しさは、共有していることの必然ではない」という一点だけです。

測り方は STUN(RFC 5780)の change-request です。別アドレスを持つ測定サーバー4つ(voipbuster / ekiga / voipstunt / counterpath)で同じ結果でした。2026-08-29、WARPを切った状態で測っています。

No effect

やっても効かなかったこと

×
ルーターのポート開放

割り振りをしている装置が自宅の外にあるので、届きません。

×
UPnP を有効にする

同じ理由で効きません。

×
IPv6(IPoE)に切り替える

よく出てくる改善策ですが、DS-Lite はそもそもIPoEなので、すでに当たっています。

×
プロバイダを変える

建物の設備として入っている回線だと、そもそも選べないことがあります。

It worked

入れるようになった方法

入れるようになった方法は2つ。どちらも実機で確かめています。ふだん使っているのはWARPのほうです。

Cloudflare WARP(無料)

Cloudflare の公式サイトから入れて、モードを「トラフィックとDNS (UDP)」にしてから「接続」ボタンを押します。これだけで対人マッチに入れるようになりました。外から見えるアドレスは Cloudflare のもの(日本国内)に変わります。SAZを起動する前に接続しておきます。

Cloudflare 公式のダウンロードページを開く

Windows・Mac・スマホの入口が並んでいます。PCで使うなら Windows 版を選びます。

Cloudflare WARP の画面。左がつないでいないとき、右がつないだとき
WARPの画面。左がつないでいないとき、右がつないだとき。モードは「トラフィックとDNS (UDP)」のままにします。この画面が「接続済み」になってから SAZ を起動します。
スマホのUSBテザリング

モバイル回線を通すので同じく入れます。ただしデータ量を食うので、原因の切り分け用と考えたほうがいいです。

A / B

つないだときと、つないでいないとき

2026年8月29日の19分間に、同じチームデスマッチで両方を試しました。変えたのはWARPをつなぐかどうかだけです。

×つないでいないとき
結果

入れない。「マッチから退出しました」と出て、こちらが抜けていないのに退出の扱いになった

ゲーム内のping

300を超えていた

そのあと

退出の扱いになった回数が積み上がり、次のマッチに入れない待ち時間が付く。この待ち時間は、重ねるほど長くなる。この日は今日2回目・シーズン累計10回目で、画面を見たときの残りは4分45秒だった

つないだとき
結果

入れて、最後までプレイできた

ゲーム内のping

20〜29ms

そのあと

次のマッチにもそのまま入れた

対戦用の通信口がどれだけ開いていたか(1秒と6分11秒)は、ページの先頭の図にまとめてあります。

ここが肝心

入れなかったときも、こちらから接続先へ打った往復は1032回すべて返ってきました。取りこぼしは0回、17msを超えたのは1032回のうち5回だけです。つまり入れなかったあいだも、回線そのものは動いていました。変わったのは、対戦のための通信が成立するかどうかだけです。ゲーム内のpingが300から20台に落ちたのも同じ理由で、つないでいないときはそもそも通信が成立していません。

Latency

遅くならないのか(実測)

ゲーム内のping21〜28ms同じ部屋の他の人は 2〜100ms

028ms

宅内(PC→自前ルーター)1ms未満

957回のpingで損失0。家の中は原因ではない。

PC→Cloudflare 大阪11ms

ここまでがWARPを通す分の増加。

大阪→SAZサーバー往復11〜17ms

サーバーの所在地までは特定できていません。

Your call

なぜ自己責任なのか

うちでは問題は出ていません。それでも人に勧めきれない理由が5つあります。順に、重いものから並べます。

1
規約に「トンネリング」「リダイレクト」が名指しである

NEXONの利用規約の第5条(行動規範)に、禁止されるものとして「何らかの方法で、Nexon又はその指定する者により使用されている通信プロトコルを妨害、傍受、模倣又はリダイレクトすること(プロトコル模倣、トンネリング、パケットスニッフィング、ソフトウェアの変更又はコンポーネントの追加…を含みますがこれに限定されません)」とあります。「VPN」という語はどこにも出てきません。しかしVPNの中身はトンネリングであり、通信の出口を変えるものです。これに当たるかどうかは、読む人ではなく運営が決めることです。ここでは当たるとも当たらないとも言えません。

2
違反と判断されたときに何が起きるか

同じ規約に「Nexonは、いつでも、理由の有無を問わず、本サービスへの利用者のアクセスを制限、停止、変更又は終了させることができる」とあります。事前の警告や理由の説明が約束されているわけではない、という意味です。

3
アンチチートと同時に動かすことになる

SAZにはカーネルレベル(OSの一番深いところ)で動く Nexon Game Security が入っています。VPNのクライアントも仮想のネットワーク機器をOSに足します。うちでは併用して不具合は出ていませんが、これは1台での結果でしかありません。

4
出口のアドレスを他人と共有する

WARPを通すと、外から見えるアドレスは Cloudflare のものになります。そのアドレスは他の利用者とも共有されます。同じアドレスから別の誰かが問題を起こしたとき、アドレス単位の措置に巻き込まれる可能性は否定できません(実際に起きたわけではありません)。

5
必ず遅くなる。そして急に使えなくなることがある

回り道をするぶん、うちでは11ms増えました。またゲーム側の対策やWARP側の仕様変更で、ある日つながらなくなることも起こりえます。恒久的に使える方法だと思わないでください。

まとめ

そのうえで、建物に備え付けの回線では、提供元が「オンラインゲームの利用はお客様の自己責任」「サポート対象外」と定めていることがあります。つまりどこにも保証はありません。使うかどうかはご自身で決めてください。

引用は 利用規約及びエンドユーザーライセンス契約(効力発生日 2026年7月16日)の第5条から。2026-08-29 に原文を開いて確かめました。規約を開く

アプリの画面で選ぶ「モード」は「トラフィックとDNS (UDP)」にします。ここだけ合っていれば、ほかの設定は初期のままで大丈夫です。

ネットで見かける判定に「100.64. で始まるIPが出たら共有型」というものがありますが、これだけで決めないでください。transix の DS-Lite はその番号を使わないので、共有型でも出てきません。うちでも1度も出ませんでした。

WAN側のIPは固定ではありません。うちのルーターは建物側からDHCPで受け取っていて、貸し出しの期限は1時間40分でした。時間が経てば別の番号に変わります。

ここに書いたのは transix の DS-Lite で確かめた話です。他のIPv4 over IPv6サービスでも、同じアドレス共有型なら似たことが起きると思われますが、そちらは確かめていません。

Glossary

専門用語の噛み砕いた説明

上の説明に出てきた専門用語を、ここでまとめて噛み砕いておきます。全部を覚える必要はありません。読んでいて引っかかったものだけ見てください。

住所のはなし

IPv4アドレス
インターネット上の住所。192.168.1.1 のような数字4組。
グローバルIPv4アドレス
世界から見えるほうの住所。家でいう表札にあたる。
プライベートIP
10. や 172. や 192.168. で始まる住所。家の中だけで通じる内線番号で、外からは見えない。
IPv6
IPv4の住所が足りなくなって作られた、新しい住所の体系。桁数が桁違いに多い。
IPoE
IPv6でつなぐ、いまどきのつなぎ方。
DS-Lite
IPv6の道の上に、IPv4の荷物を載せて運ぶ仕組み。新しい道しか無いところに、古い形式の荷物を通すための工夫。
アドレス共有型
1つの表札を、近所の何十軒かで一緒に使っている状態。
transix
そのDS-Liteのサービス名。運営はインターネットマルチフィードという会社。
AS番号(AS55392 など)
ネット事業者に振られた背番号。誰の設備を通っているかが分かる。

仕分けのはなし

NAT
家の中の何台もの機械を、1つの表札で外とやりとりさせる仕分け係。
NAPT
NATの細かい版。番号まで見て振り分ける。ページに出てくる「NAPT位置」は、その仕分け係がどこに置いてあるかという意味。
三重NAT
その仕分け係が3段重なっている状態。うちは 自分のルーター → 建物の設備 → 事業者の設備 の3つ。
ポート開放
外から自分宛に届く荷物を受け取れるように、仕分け係へ「この番号は自分へ回して」と登録しておくこと。
UPnP
その登録を、機械が自動でやってくれる仕組み。
ホストになる
対戦部屋の親を自分が務めること。自分のPCが会場になるので、外から入ってこられる必要がある。ポート開放ができないと務まらない。

調べ方のはなし

tracert
自分から相手まで、どこを何回経由したかを順番に表示するコマンド。
ホップ
経由地1つぶんの数え方。「2ホップ目」は2つ目の経由地のこと。
逆引き
数字の住所から名前を調べること。名前に transix.jp が入っていればIPv4 over IPv6 だと分かる。

回り道と速さのはなし

VPN
通信を別の入口から出し直す仕組み。回り道をさせる。
Cloudflare WARP
Cloudflare社が無料で出しているVPN。このページで使っているのはこれ。
USBテザリング
スマホの回線を、USBケーブルでPCに分けてもらうこと。
ping
相手に声を掛けてから返事が返るまでの速さ。
ms(ミリ秒)
1000分の1秒。21msなら0.021秒で返事が返る。
損失
送ったのに返ってこなかった割合。0なら取りこぼしなし。
UDP
荷物の送り方の一種。順番を待たずに投げっぱなしにするので、多少落ちても止まらない。ゲーム向き。WARPのモードに出てくる「(UDP)」はこれのこと。
アンチチート
不正対策のソフト。SAZに入っているのは Nexon Game Security。
カーネルレベル
OSの一番深いところで動くこと。強力に見張れる反面、他のソフトと噛み合わないときの影響が大きい。